J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (12)
「お父さん。やめて。」
レイは、レイの父が言わんとすることを察知したようで、 その話ならばやめて、というような口調でレイの父に言いました。 そして私に向かって、 「ごめんなさい、工藤さん、工藤さんには関係ないことなんです。」 と言い、また自分の父に向かって、 「もう、お父さんったらぁ、、」と言う。
何なのだ、いったい?
少しばかり相談すること、 なのに、私には関係のないこと。
レイとレイの父は、分かって話しているのだろうけれども、 私には何のことやらさっぱり分からない。
「あ、いや。そうなんですか?」 と私はレイとレイの父をかわるがわる見比べてから、 レイの父に向かって笑顔で言う。 「あはは、レイちゃんのお父さん、私にできることなら何でもします。 できることは限られていますが、、。できるだけのことはします。」
「そうですか、。なにぶん、こうしたことになっていますので、。実は、、。」 とレイの父はレイを見やりながら話し出す。
しかし、レイはその話を打ち消すように、 「お父さん。」と真顔で強く言ってから、 「ごめんなさい、工藤さん、また今度、私から相談させてもらいます、」 と私に言い、レイの父の話の腰を折ってしまった。
レイの父はちょっと憮然のした表情をしましたが、 レイの真剣な眼差しに圧倒させられたか、それ以上話はしませんでした。
私も、レイの表情に真剣さを認め、 この場は立ち入った話を聞かぬほうがよいと感じ、 「うん、そうだね、いつでもいいからね。」と言ってから、 レイの父に向かって、 「いずれにせよ、できるだけのことはします、ご安心ください、。」と伝えました。
レイの父は何か考えるように頷きながら、 「なにぶん、こうしたことですので、、よろしくおねがいします、。」 と繰り返すように言いました。
「はい。」と私は神妙に答えて。
一瞬、沈黙。
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