J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年10月26日(火)    レイの父は頭を深々と下げ私に礼を言いました。

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (10)


「工藤さん、この度はいろいろお世話になりまして。。」

レイの父は頭を深々と下げ私に礼を言いました。

私は恐縮して、「いえ、そんなこと、」と言いながら、
レイの父と同じくらいの高さまで頭を下げ、
「このたびはご愁傷様のことで・・」
と通り一遍の挨拶をしながら、
何を言えばいいのか考えるのだが、思い浮かばない。

レイは神妙な顔で私の隣に座ってる。

一呼吸おいて、レイの父。
「工藤さんのおかげでレイも母親の死に目に会うことができました。
 その節は急のことでしたので礼も言えず、失礼を致しました。」(参照こちら
「あ、いや、その、でも、間に合ってよかったです、、、。」

間に合って“よかった”、はないだろう、
と言ってしまってからしまったと思った私、
だが言ってしまったものは仕方ない。
「なんとも、残念の極み、でしたが、、。」と私は付け加える。

レイの父は無言で左右に首を振る。
(人の死は寿命であって致し方ないことですから、、)とばかりに。

「ほんと、工藤さん、ありがとうございました。」とレイも口を挿み礼を言う。
「いや、僕ができることをしたまでだよ、それぐらいしかできないしね、。」
と私はその夜のことを思い出しつつ答える。

その夜、レイを抱きしめてやれなかった私。(参照こちら


一呼吸おいて、レイの父、。
「それにまた葬式にまで来ていただいて、お忙しいところでしょうに、
 遠いところほんとうにありがとうございました。」
「いえ、今日は会社を代表してのことです、言わば公務です、」と私。
「でも、あの夜は工藤さんのご好意なのですよね、」とレイの父。
「ええ、まあ、そういうことですが、」と私。

レイの父はしげしげと私の顔を見て、そしてレイに言う。
「ほんとうに、レイはよい方の下で働いているな、な、レイ。」
レイはにっこりとして頷く。

「ところで、工藤さん、娘のレイの仕事っぷりはどんなものです。
 この子といったら、最近、ほとんど実家に寄り付かなくって。
 たいそう忙しいようなことは聞いているのですが。」


さて、どう答えよう。

私はレイの顔をちらと見る。


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