J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (8)
そこへ60過ぎに見える男がレイと私の後ろに来て、 レイに話しかけました。
「レイちゃん、悲しいよね、気しっかり持つんだぞ。」 「あ、おじさん、、、。はい、ありがとうございます。」
どうやらレイの親戚筋の人物らしい。 だいぶアルコールが入っているらしく、赤ら顔。 私はちょこっと会釈する。
「ああ、どうも。」とその男。 「このたびはご愁傷さまで、、」と私。
男は私を誰?という顔でまじまじ見つめ、 レイに説明を求めるようなしぐさをする。 レイは言いました。
「私の勤めている会社の課長さんで、、」 「工藤、と言います。」 と私はレイの言葉尻を続けて自分から名乗りました。
「おじさん、工藤さんには私、いつもお世話になっているの。 今日も会社を代表してお葬式にきてくれたの。」とレイ。 「あー、そうなんですか、それはご苦労様です。ま、どうぞ。」 とそう言いながらそのおじさんはビールを私に注ごうとする。
「あ、はい、ありがとうございます。」 と私はコップにビールを受け、一口なめるようにして、 「おじさんもどうぞ、」 とビールを注ごうとする。
(あっと、グラス、、) と私が思うより前に、 レイが新しいコップをおじさんに手渡している。
(気が利くね、)と私はにこりとしてレイを見、 レイは(でしょ?)という顔でにこりとし私を見返す。
おじさんはそんな私たち二人を(ふうん)という顔で見ながら、 黙ってグラスにビールを受け、そしてぐっと飲み干して。
「レイちゃんも隅に置けないね、ははは。」と笑うのでした。
隅に置けないって?
もしかしてこのおじさん、 なにか勘違いしているんじゃ!?
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