J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年10月21日(木)    レイちゃんも隅に置けないね、

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (8)


そこへ60過ぎに見える男がレイと私の後ろに来て、
レイに話しかけました。

「レイちゃん、悲しいよね、気しっかり持つんだぞ。」
「あ、おじさん、、、。はい、ありがとうございます。」

どうやらレイの親戚筋の人物らしい。
だいぶアルコールが入っているらしく、赤ら顔。
私はちょこっと会釈する。

「ああ、どうも。」とその男。
「このたびはご愁傷さまで、、」と私。

男は私を誰?という顔でまじまじ見つめ、
レイに説明を求めるようなしぐさをする。
レイは言いました。

「私の勤めている会社の課長さんで、、」
「工藤、と言います。」
と私はレイの言葉尻を続けて自分から名乗りました。


「おじさん、工藤さんには私、いつもお世話になっているの。
 今日も会社を代表してお葬式にきてくれたの。」とレイ。
「あー、そうなんですか、それはご苦労様です。ま、どうぞ。」
とそう言いながらそのおじさんはビールを私に注ごうとする。

「あ、はい、ありがとうございます。」
と私はコップにビールを受け、一口なめるようにして、
「おじさんもどうぞ、」
とビールを注ごうとする。

(あっと、グラス、、)
と私が思うより前に、
レイが新しいコップをおじさんに手渡している。

(気が利くね、)と私はにこりとしてレイを見、
レイは(でしょ?)という顔でにこりとし私を見返す。

おじさんはそんな私たち二人を(ふうん)という顔で見ながら、
黙ってグラスにビールを受け、そしてぐっと飲み干して。

「レイちゃんも隅に置けないね、ははは。」と笑うのでした。


隅に置けないって?

もしかしてこのおじさん、
なにか勘違いしているんじゃ!?


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