J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (7)
「それは、あー、うん、これからのことだよ。」
咄嗟に私は思いついたようなことを言う。 これからのこと、と言えば、何にでも合わせることができます。 なので私が話題に困った時によく使うフレーズでした。
「これからのこと、、?」 レイは復唱して言いました。 「そう、これからのこと。 ね、レイちゃん、あのさ、これからどうするの?」 と今度は私は声を潜めて聞きました。
聞きながら、、 私は何についてこれからなのか、考えている。
これから、つまり、この直会が終わってから、でもいいですし。 これから、そう、レイがいつ頃会社に復帰するのか、でもいい。 あるいは、これから、母のいなくなったレイの家ではどうしていくのか、 ということも言える。
ですがこの場合は。 レイの話したい“これから”に合わせ話を続けるがいい。 私はそう思い、レイの返答を待つ。
「これから、ですか、、。」レイは少し考えてから、 「そうね、これからどうするのか、 私は、、まだ決めかねているんです。」
決めかねている? どういうことだろう。
「どうして決めかねているの?」 「それは、お父さんは、・・・というけど、私は、・・・ですし。」
レイは肝心なところをごにょごにょと小声で言うので、 私にはよく聞きとれなかった。 「え?、何?。。よく聞こえないんだけど。」
レイはじっと私の顔を見る。 そして言う。 「また、相談させてください。今は。。」
私もまたじっとレイの顔を見て、そして言う。 「ん。わかった。今度ゆっくりな。」
実は。 私には何のことだか、まったくわからなかった。
だが。 その場はわかった顔をして、その話をやめた。
レイはこれからのことを決めかねている。 そしてお父さんと意見が違っている。 それを私に相談したいという。
今は。 それだけわかっていればいい。
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