J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年10月19日(火)    それは言えない。

J (3.秘密の恋愛)

8. 誤解 (6)


「ところで、レイちゃん、あのさ、」

私はレイの彼氏のことを聞いてみようと思って、
思い切ってそう話し出しました。
レイは何のことかと私を見る。
私はちょっと周りを見回してから、小声になって、。

「いやなに、どうということでもないのだけど、あのさ、」
「、、?」
レイは私を見つめ次の言葉を待っている。
そうやって見つめられると、、

聞けないじゃないか。


それにだ。
俺にはまったく無関係のことなんだ。
その男がどんな男だろうが俺にはまったく関係がないのだ。

俺は俺の立場でそう、レイの上司として葬式に参列し、
そしてレイの上司としてこの直会に出ている。
それだけのこと。

だから、聞きたいけれど、、。
聞けない。

しかし。
関係ないならば聞いたって構わないはずだろう。
とも思うのだが。。


・・

ふと気がつくと、レイがくすくす小さく笑ってる。

「工藤さん、また自分の世界に入ってる?」
「なんだ、自分の世界って?」

「うふふ、知らないんだ、工藤さん、みんなが言ってること。
 あのね、工藤さんってよく黙って考え事してるような時があるの、
 それもみんながいてる前で、急によ。」
「そうかね。」

「そう、それをみんなは“自分の世界に入ってる”って言ってるの。」
「なんだか、人聞きが悪いな、それ。」
「そうかしら。」

「でもまぁ。確かに今は考え事をしてたよ。」
「何考えていたんですか?」
「それは、。」


それは言えない。
まさかね、君の彼氏の事だなんて、。

決して言えない。


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