J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (6)
「ところで、レイちゃん、あのさ、」
私はレイの彼氏のことを聞いてみようと思って、 思い切ってそう話し出しました。 レイは何のことかと私を見る。 私はちょっと周りを見回してから、小声になって、。
「いやなに、どうということでもないのだけど、あのさ、」 「、、?」 レイは私を見つめ次の言葉を待っている。 そうやって見つめられると、、
聞けないじゃないか。
それにだ。 俺にはまったく無関係のことなんだ。 その男がどんな男だろうが俺にはまったく関係がないのだ。
俺は俺の立場でそう、レイの上司として葬式に参列し、 そしてレイの上司としてこの直会に出ている。 それだけのこと。
だから、聞きたいけれど、、。 聞けない。
しかし。 関係ないならば聞いたって構わないはずだろう。 とも思うのだが。。
・・
ふと気がつくと、レイがくすくす小さく笑ってる。
「工藤さん、また自分の世界に入ってる?」 「なんだ、自分の世界って?」
「うふふ、知らないんだ、工藤さん、みんなが言ってること。 あのね、工藤さんってよく黙って考え事してるような時があるの、 それもみんながいてる前で、急によ。」 「そうかね。」
「そう、それをみんなは“自分の世界に入ってる”って言ってるの。」 「なんだか、人聞きが悪いな、それ。」 「そうかしら。」
「でもまぁ。確かに今は考え事をしてたよ。」 「何考えていたんですか?」 「それは、。」
それは言えない。 まさかね、君の彼氏の事だなんて、。
決して言えない。
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