J (3.秘密の恋愛)
8. 誤解 (5)
として、私も同じように、 黙ってうつむいているわけにもいかないと、 当り障りのない話題を考えてはみるものの、 何を話してもこの場に無縁の私の話、 誰に話そうにも相手がいない。 なので、やはり私は、黙って杯を重ねてる。
目の前に座っている島田(参照こちら)が気を利かせ、 どうぞどうぞとビールを注いでくれ、 レイも私に気を使い、「工藤さんどうぞ」と注ぎ足して、 さらにレイのお姉さんもまた同様に、 気がつく前に注ぎ足すものだから、 ついつい私は、案の定、少しずつ酔ってしまう。
物静かにして飲んだ酒の酔い、 まして昼間のアルコールはすぐ回る。 いつもの悪い癖が出なければいいのだが、 と自分を心配しつつも、 既に自分が自分であって自分でないような、 そんな私にもなりつつありました。
やがて。
周囲にもアルコールが進み酔った者も出てきて、 だんだんと座も緩やかになり、 やっと私も隣りに座るレイに対し、 私的に話し掛けることができるようになる。
レイも少し酔ったように見えました。
周りの人と同様に。
|