J (3.秘密の恋愛)
7. 葬式 (2)
当日、告別式は午前11時からでしたので、 私は自宅から直接レイの実家へ行くことにしました。 その方が近いこともありましたし、また、着替え等も面倒でしたので。 しかし近いとは言っても電車で行くのは初めてのこと、 時間が読めないこともあって朝7時半には家を出たものでした。
何故車ではなく電車で行くことにしたのかと言えば、 レイの生まれ育った土地を肌で感じたかったのだと思います。 葬式に行くのに不謹慎ではありますが、たぶん。 それ以外にはそうした理由を思い出せないのです。
通勤列車を逆方向に乗り、悠々腰かけて車窓を見ながら、 私はレイの実家へと向かったのです。
・・
タバコを燻らし思うこと。
レイの哀しみの深さは如何ほどだろう。 突然に母親を亡くして。
まだ若いのに。 早過ぎるその時。
そう言えばオレの父親も早過ぎたな。 孫の顔も見ないで。
レイの母親などは娘の結婚も見ないのだ。 見たかっただろうに、娘の晴れ姿。
俺はどうか。 娘のユキの晴れ姿、見ずに死ねるか。 いや、見ずにというよりも、見届けてやりたい。 どんなことがあろうとも。
だが。 死はやがて訪れる。 誰にでも。
なれば生きている間に、 できるだけのことをしておきたいものだ。
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