6. 個人的な話 (12)
田んぼがひろがって暗い道。 対向車もほとんどなくて。
「けっこう田舎なんだ、レイちゃんちって、」 「あーん、だからいやだったんだなー、工藤さんに送ってもらうのぉ、」 「あ、いや、自然がいっぱいあっていいじゃないか、」 「うーん、田んぼしかないのよ、あと、少し先に海、」
そう言えば遥か向こうに防砂林が見える。
「学校行くの、大変だっただろね。」 「自転車で行ってた。」 「自転車、か、どれくらいかかったの、○×高校だったよね、」 「40分くらい、かナ?」 「雨の日は?」 「雨の日もカッパ着て。」 「ふーん、レイちゃんがね、、」
そういって私はレイをまじまじと見ました。 そして一番最初に顔を合わせた面接の時のレイを思い出しました。(参照こちら)
今のように髪を染めていない、艶やかな黒髪のレイ。 最近の子には珍しくキャピキャピしたところがなく、 落ち着いていて芯が通っているように感じられた。
あれからずいぶん月日がたったものだ。
あれから始まって。 ずいぶんと変わったものだ、何もかも。
しばらくして。 「あ、そこのタバコ屋さん、そこ曲がってください。」とレイが言う。
「もう近いんだね。」 「はい、あの向こうの家。」
その方角には田んぼの向こうに数軒民家が立ち並んでいました。 みな古い農家の家でした。
「君んとこ、農家だっけ?」 「父は勤めてます、おじいちゃんたちが少しやってますけど。」
と話すうちにレイの家の前に着く。
レイのうちは、、
しんとしていました。
|