6. 個人的な話 (8)
「じゃあ、聞こうじゃないか、その君の個人的な話を。」
私はわざと堅苦しい調子で口を開きました。 落胆した様子を知られまいとしておう揚に。
興味もないが君の個人的な話とやらだ、 聞いてやる、とそんな態度で。
がレイは相変わらず硬い表情を崩さず、 話の内容をどう切り出したらいいのか、 頭の中で考えているようでした。
「何なのかな、彼氏とけんかでもしたの。」
と今度は私は少しおどけた調子で話しました。 けれど少しばかりイヤラシイ言い方でしたので、 言った途端私は自分を恥じたのですが。
(今夜用事があるんだろ、デートじゃないのか、早く話しなよ。)
言外にそういう意味が込められているようにも取れましたので。
しかしレイは、「そんなんじゃありません、」ときっぱり答えました。 そして沈痛な面持ちになって。
「実は、、、。」と話し始めたのです。
、、実は母が入院しました。 、、、入院!、どうしたの? 、、いえ、大した事はなさそうなんですけど、 、、、いつ連絡あったの? 、、さきほどお話するちょっと前にです、 、、、なんであの時すぐに言わなかったんだね、そんなに大事なこと。 、、だって工藤さんが、あとで、っていうから、
、、、ばかだなぁ、そういう話はすぐするもんだよ、 、、でも、大した事なさそうだし、 、、、誰から連絡があったの? 、、実家の父からです、 、、、ふうん、で? 、、いえ、それだけです、
それだけって言ったって。 お母さんが入院、ってことはそんなにのんびりした事じゃないだろ。
、、、病気かい、それとも事故? 、、病気のようですが詳しいことは分からないんです、父も突然電話してきて、 、、、、ううーん、心配かけないようにとの配慮かもな、 、、ええ、たぶん、父はそういう人ですから、 、、、それで、どうするの、 、、それで、どうしたらいいかな、って思って、相談したかったんです、工藤さんに、 、、、そうか、。
どうしたらいいかって。 あまりに情報が少な過ぎる。
ともかく。 実家に帰らせた方がよさそうだな。
「レイちゃん、今夜用事があるって言ったね、何だ?」 「え、ちょっと、」、レイは口篭もりました。
「今夜はやめとけ。」
私はそう言い放ちました。
ある決意を持って。
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