J (3.秘密の恋愛)
6. 個人的な話 (3)
その忙しさは私とレイに空白の時を与えました。 正直に言えば私は忙しさに逃げていたのですが。
レイはと言えば私とのあの話などまるでなかったかのように、 いつも通りに私と接し会話し仕事をこなしていました。
想い出。 そう、レイにとってはすべて想い出の話だった。 だから、ああいうふうにいつも通り変わらぬレイなのだ。
何度もあの出張の晩の話を反芻して出した私の結論はそれでした。
取り残されたのは私のレイへの想いだけでした。 3年振りに火が噴くように心から出てきたレイへの恋愛の情。 過去の遺物のようなこの感情を沈めるために、 私は空白の時を求め、忙しさに身を投じていたのです。
3年間で何もかも状況は変わったのに。 私のレイへの想いだけが取り残されたように此処にある。
誰に話すこともできないこの想い。 自ら断ち切るより私には仕方がありませんでした。
時の過ぎ行くままに任せて。
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