J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年04月07日(水)    妻の友美さんは不平ひとつ漏らしませんでした。

J (3.秘密の恋愛)

6. 個人的な話 (2)


7月に入ると早々に百貨店は値引きセールを始めます。
私たちの持っている売り場は高級輸入品の部類を扱っているので、
そうした時期にも値引きはあまりしないのですが、
この時は商品が薄く古い在庫を店頭に並べていたこともあり、
百貨店のバイヤーと相談しセールをすることにしました。

次シーズンの商品の入荷は早くて7月下旬です。
売り場に穴を開けないがために苦心惨憺する日々となりました。

当時私は北は函館から南は北九州まで、
百貨店の売り場のほとんどを自分で見ていました。
とは言えまだ10店舗もなかったのですが。
それでも、慣れぬ業界で誰に教えてもらうこともなく、
自分ひとりで開拓し広げてきた販売先です。
なんとしても一生懸命にこと当たっていたのです。

出張先から会社に残るレイと連携しながら、
来る日も来る日も商品を入れ替え差し替えして、
朝から晩まで売り場に立って、とんぼ帰りしては商品を補充し、
あっと言う間に7月も半ば過ぎてゆきました。


忙しくて忙しくて。

出張の度ごとに数日家は空けますし、
出張でない日にも夜遅く帰り朝早く飛び出す。

そんな生活が続いていたのです。

無論休日返上でした。
誰に指図されてではなく、休んでいられなかった。

しかし妻の友美さんは不平ひとつ漏らしませんでした。
そんな私を妻として支える、それが彼女の幸せのようでした。
どんな時でも笑顔でくたびれた私を迎えてくれる友美さんでした。

私は後陣に憂いなく仕事に専念できていたのです。


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