J (3.秘密の恋愛)
4. 無常 (11)
あの時、俺は不思議に思ったんだ。
もの思いに耽っているのかと思うと、 ケロっと明るく楽しそうに振る舞ったレイ。
女心は分からない、と気にも留めなかったレイの心中には、 それほどの深い動揺があったのだ。
道理で。 その後花火が打ちあがった時もレイは私を見ていたわけだ。(参照こちら)
私が友美さんと肩を並べて花火を見上げている姿、 レイにとっては切なく胸を締め付ける光景だったことだろうよ。
そう、あの時俺はレイと一瞬目があって、俺は自分から目をそらした。
そして、、、そして俺は、肩を並べているところを、 レイに見られたくないかのように、友美さんから身をずらし少し離れたのだった!
ああ、何と言う無常、、、。
・・
「工藤さん、」 「ん。」 「その夜、のこと、覚えていらっしゃらないでしょ?」 「、、、その夜、、、、さっきも聞いたよね、そのこと。」(参照こちら) 「ええ、」
夏季研修の花火の夜。 私の記憶にない夜。 友美さんを抱き新しい命が確かに生まれた夜。
「う、うん、ごめん、本当はあまり記憶が、ないんだ、」 「やっぱり、、、」 「でも、言ってくれれば思い出すと思う、いったい、俺は何をした、何を言った、、」
レイは私の肩に頭を凭れ掛けました。 お願い、思い出して、と言うように。
私は一瞬レイの肩に手を掛けようとしましたが、、、、それは、出来ませんでした。 レイは少し私に体を預けてからまた体を離し、哀しげな目をして私を見ました。 私はすまなそうな顔をして、目で、申し訳ない、と言うのです。
しばらくして、やっと、レイが口を開きました。
「私は妬け酒を飲むように酔っていた、の。そこへ工藤さんが来たの、覚えてません?」
、、、。
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