J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年01月16日(金)    夏季研修の日、あの日、私は初めて友美先輩に逢ったの、

J (3.秘密の恋愛)

4. 無常 (9)


「憧れ、でしかなかったわ、工藤さんは大人だったし、上司だし、
 好きになっても叶わないこと、分かっていたし、」

「でも、一緒に仕事して、一生懸命働いて、工藤さんに認めてもらって、
 時には厳しく注意されたりもしたけど、誉められるとうれしくて、
 工藤さんと会社で過ごす日々が、私は楽しかった、幸せだった、、。

 、、、夏季研修の日、までは、、、。」

レイはそこで言葉をいったん切りました。
下を向いて、ちょっと苦しそうな表情、何か苦い想い出を思い出したかのように。


「、、、夏季研修の日、、、。」私は思い出すように言葉を漏らす。


レイが続ける。

「そう、夏季研修の日、あの日、私は初めて友美先輩に逢ったの、(参照こちら
 とても素敵な人だったわ、優しくて、可愛くて、人当たりがよくて、
 工藤さんのお相手として申し分のない、これ以上にない、そんな人だった、、、」

私はまた黙って聞くよりない。
なんと答えようか、言葉が見つからない。
呆然とレイの口元を見つめている。
魂を抜かれたように。


レイが話を続ける。

「けど、私は、、、私は、何故だか悲しくなってしまった、表面上は明るく振舞っていたけど、、、
 今思えばあれは嫉妬だわ、自分にないものを持っている、友美さんに対しての、
 ううん、劣等感、だから、悲しくなった、そうだわ、そうに違いないの、」

「でも、友美さんはそんな私の心のうちを知らず、私を優しく包むように接してくれた、
 いえ、私ばかりじゃなくみんなに、だから、すぐにみんなに慕われたわ、
 いい人、なの、友美さんて、本当にいい人なの、素敵な人なのよ、、、」

レイは相槌を私に求めました。

私は押し殺した小さな声で、「ああ、いい人、だ、」と答えました。


それを聞き、レイは、ふっとため息を吐いて、
「そう、いい人、私なんかより、ずっと、素敵なひと。」と言いました。

私は労わるように、
「それは違うよ、レイちゃん、君には君のよさがある。」と言いました。


レイは無言で首を横に揺りました、、、。


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