J (3.秘密の恋愛)
4. 無常 (8)
レイのその一言は私の心を突き刺した。 私は息の根を止められたかのように言葉が出ない。
(私、工藤さんが、好きでした。)
ああ、何ということをレイは言うんだろう! だからといって何も変わらないのに! 言わないで欲しかった、その言葉。
俺が何故君への想いを固く封印してきたのか分かるか! どうしようもないからなんだ。 今更、、、今更そんなこと聞いても、苦しいばかり、なんだよ、、、。
辛うじて私は言葉を返す。 「、、、あ、ああ、そうなんだ、、、。」
レイは私の方を見ずにぼそぼそと話を続ける。 思い出すように。 自分の気持ちを確かめるように。
「私は工藤さんが好きでした。最初から。」
そんなこと。 言っちゃだめだよ、レイちゃん。
「、、、いや、でも、それは、聞かなかったことにする。」 「どうしてですか。」 「君が傷つくよ。」 「そんなこと、ないです、」 「今更、過去の話、俺に打ち明けてどうする、何も得るものがないじゃないか、」
レイはキッと険しい表情をしました。 「得るもの、なんて、望んでもいない、話したいだけ、いい想い出、にしておきたいだけ、 工藤さんはずるい、自分ばっかり気持ちを打ち明けて、私も、話しておきたいだけ、」
「ずるい、、、。俺が、ずるい、か、」 「そう、ずるい、私だって、いろんな想い、持ってきた、んです、」 「、、、ん、」
レイは一気に話し始める。 私の相槌を待たずに。
「私は、一番最初に工藤さんに逢った時、この人だ、って、思ったの、 あの面接の日が、私にとって運命の日だったの、」
「工藤さんは私に熱意を持って会社の話を聞かせてくれた、 うれしかった、この人と一緒に仕事をしたい、そう思ったの、」
「好き、になりたい、自分ではそう思った、けど、工藤さんは、言ったの、 僕には婚約者がいるって、僕に恋しちゃいけないって、」(参照こちら)
「なら、憧れ、でいいや、って、一緒に仕事、できればいいや、って、 そう思って、会社に入ったの、だから、憧れ、ってさっき、言ったの、」
、、、私は返す言葉なくただ聞くのみしかできない。
レイの話は続く。
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