J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2004年01月13日(火)    私、工藤さんが、好きでした。

J (3.秘密の恋愛)

4. 無常 (7)


「君の気持ち?」
私はごくと唾を飲んでからそう聞き返しました。

レイは泣いている。
泣きながら、うん、と首で返事をする。

「君の気持ち、って言っても、、、。
 ああ、ともかく、レイちゃん、泣かないで、君、酔ってるよ、」


しかし、レイの涙は私の涙なのだ、、、。
レイは私のために泣いてくれているのだ、、、。

何故ならば。
レイに泣かないで、と言いながら、私は心の中で泣いていたのです。


・・

レイは本当に酔っていました。
私も本当に酔ってしまっていました。

言うことが前後して、思いつくままを話して。

自分の世界に入って。
やがて、二人の世界に入って。

より一層親密さを増して、寄り添う二人でした。
肩と肩が触れ合うほどに。


「君の気持ちがどうあれ、すべて過去の話さ。
 始まりなく終わった話、そしてそれはいい想い出、それでいいんだよ。」
「でも。」
「いや、いいんだ。いいってさっき君も言ったじゃんか。」
「、、、。」

しばらく黙り込む、レイ。
話はここまで、だ、とタバコを取ろうとする私。

これで、よかった、んだ。

とその時。

レイがぼそっと言う。


「私、工藤さんが、好きでした。」


、、、痛ッ


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