J (3.秘密の恋愛)
4. 無常 (2)
いや、違う。 それは俺の早とちりだ。
憧れる、と恋心を抱く、は根本的に意味が違う。
レイは俺に憧れて会社に入社したと言ったが、 決して俺に恋心を抱いて入社したとは言ってはいない。
ああ、また俺は自分に都合よく物事を捉えようとしているな。
何故だ。
今まだ俺はレイに未練があるのか。 結婚をして子どもまでいて、固く封印して風化している筈の恋愛の情。 よもや心の奥底で細々と残っているとでもいうのか。
それは、否、だ。
俺はレイに何も感じていない。 今隣に座るレイに些かなりとも恋情を感じ得ない。
間違いなく、、、。
間違いない、よな?
間違いないと思い込むんだ、俺よ。
そう思い込め!
そう思い込め〜、、、俺よ。
揺れてはいけない、、、。
ああ!、だけど、こんなに頭が揺れている!
くるくるくるくる、揺れている!
くっ!
、、、そう、そうだよ。
レイは俺に憧れて会社に入社したさ。 けど、恋心を抱いていたわけじゃない。
そして、そのことがどうだって言うんだ。 今さら何がどうってことあるまいに。
ふん、何をうろたえているんだ、クドウジュンイチ。
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