J (3.秘密の恋愛)
3. 想い出の夜 (12)
どうする、どう答える、どうする、どう答える、、、
私の頭の中はくるくる回る。
あー、駄目だ、何か言わなくては。
私はレイの方を向き直りレイの表情を窺う。 が、レイは窓の外を見ていて表情が掴めない。
もう駄目だ。 誤魔化すことはできない。 というか、何を誤魔化すんだ。
みな過ぎたこと。 今更俺がレイをどうするもないものだ。 レイに恋愛の情を持ち得ないこの俺なんだ。
あの時は、悪かったね。
この一言、言えば済むことじゃないか。
、、、「あの夜、あー、寿司秀で飲んだあの夜、のこと、だね。」
私は辛うじて気持ちを鎮めて言いました。
、、、「あ、覚えてくれていたんですね、やっぱり、」
レイは私の方を向きそう言葉を返しました。 その言葉には安堵の色が出ていました。
安堵。
何故か、私をほっとさせるような、言い方、だったのです。
レイは言葉を続けました。
「あの時は私、、、」
「待って。レイちゃん、僕に言わせてくれ。僕は君に詫びたいことがある。 あの時は、俺、、、」
(あの時は俺、あんな振る舞いをして、申し訳なかった、)
と言う寸でのところで、
「はい、着きました〜、」と運ちゃんの声。
、、、ちっ、タクシーがホテルに着いた。
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