J (3.秘密の恋愛)
3. 想い出の夜 (13)
私にとってよかったのか悪かったのか、タクシーはホテルに着いた。
言いかけた言葉を飲み込んで。 先にレイが降りて、私は金を払って後から降りて。 ホテルの正面玄関をふたり、並んで入って。 話は尻切れトンボで終わったまま。
だめだ。 これでは気になって寝られやしない。 このまま、おやすみ、なんて言えないよ。
(あの夜。) その話題がレイの口から出た限りには、レイもなんらかに思うことがあったはずだ。
(あの時は私、、、。) て、いったいレイは、何言うつもりだったんだろう。
私はフロントでそれぞれの部屋のキーを受け取って。 心の中と裏腹にまったく平然とした顔付きで。
レイは、、、。 レイは、無表情。
どうして、無表情なんだろう?
えーい、もう!
私はレイに部屋のキーを渡しながら話し掛ける。
「レイちゃん、あのさ、」 「はい?」 「あのさ、せっかく大阪に出張に来たんだからさ、」 「はい、」
レイは何ですか?という顔。 私は何でか上ずった声。
待てよ、俺は何でドギマギする。 疚しい心は何一つないのに。
そう、堂々たるものなのに。 そうだ、普通に、言やいいんだよ。
「このホテルの最上階にラウンジバーがあるんだ、」 と私はホテルのインフォメーションを指差して言いました。
「、、、疲れている、よね、けど、よかったら、どう、少し、夜景が見えるから、」
レイは、ちょっと首を傾げて。
ニコリと笑いました。
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