J (3.秘密の恋愛)
3. 想い出の夜 (10)
「あ、なんだい?、」と私。 「あ、なんですか?」とレイ。 また言葉が重なって。
「いいよ、レイちゃん、先に話して、」 「いえ、いいです、工藤さんの話、聞きたいから、」 「あいやぁ、たいしたことじゃないんだ、俺の話って、レイちゃん、話して、」 「あん、私もたいした話じゃないんです、本当に、」
「そうか、、、」 と私はまた口を噤みました。 レイもまた黙ってしまいました。
どうする、どうする。 このままじゃ、このまま、だ。
私は考えた挙句、投げやりな考えに行き着きました。
このままで、いっか。
恋人同士なんじゃないんだし。 仕事で来ているんだし。
すると。
レイが窓の外を見ながらぽつりと話す。
「工藤さん、こうしてふたりでタクシーに乗るの、あの晩以来ですね、、、 覚えてますか、あの夜のこと、」
あの夜!
あの夜。
あの夜、、、。
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