J (3.秘密の恋愛)
3. 想い出の夜 (9)
「そうだな、しっかりした、」私は少し笑みを浮かべて答えました。 「それじゃ、私が言ったことと同じじゃないですか、」レイは口を尖らせて、でも、笑顔で。 「まぁ、ものになった、ってことだよ、、、、おっと、タクシーが止まった、」
私たちはやっとタクシーを止めることができました。
・・
レイとふたりでタクシーに乗るのもあの晩以来のことでした。(参照こちら) あの日以来、私とレイは無意識にそうなることを避けていました。 忌まわしい思い出を消し去りたい、そう思っていたのだと思います。
この時も一瞬あの晩の記憶が私の脳裏をよぎりましたが、 レイはさほど気にすることもなく平然としていましたので、 私はほっと胸を撫で下ろしたように記憶しています。
普段と変わらぬレイがそこにいたのです。
しかし、タクシーに乗り込んだ途端、私とレイは端と端に座り、 それぞれ窓の外を見て無言になりました。
ホテルまでおよそ10分。
私は何か話さなくちゃ、と焦燥感に駆られた。
このままじゃ、このまま、だ。
普通に話せばいいんだ、
上司と部下、なんだから。
私は自分に言い聞かせ、レイに話し掛ける。
「あのさ、」「あの。、」
、、、私とレイは一緒に口を開き、言葉が重なりました。
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