J (3.秘密の恋愛)
3. 想い出の夜 (3)
そろそろお開きにするか、という頃合いになり、 私はトイレへと席を立ちました。 鏑木さんも、じゃ、俺も、とふたりして連れ立って。
「ふぅ〜、で、クドちゃん、次どうすんの?」と鏑木さん。 「次って?」と私。 「またまた、もう一軒、どうすんだってこと。このままホテルに戻るのか? んなこたぁないよな、ほら、行きの新幹線の中で話してただろ、」と鏑木さん。 「あー、そういうこと、どうしましょうかね、、、」と私。(参照こちら)
私は歯切れが悪かった。 みないい様に酔っていて元気だけれど、 実際は朝から働き詰で草臥れている、そして明日もある。
ここでもう一軒、いつもの調子ではしごして大丈夫だろうか、 と心のブレーキが働いて。
そしてレイ。
彼女はわれわれ以上に草臥れているはずだ。 初めての出張で慣れない場所で責任者として神経を使い、 食事も取らず一日中立ち通し、気力体力とも使い果たしているに違いない。 我々男が楽しむような店に行ってまた気疲れしなければいいが。
「けど、鏑木さん。明日もあるんですよ。それに、、、レイちゃんが可哀想ですよ。 彼女はもう一杯一杯の筈です、鏑木さん、一緒だったから分かりますでしょ、」 「うーん、そうだな、うん、レイちゃんは確かに頑張った。」 「でしょ?」 「じゃぁ、クドちゃん、悪いがオレ達だけで行ってくるよ、」 「オレ達、って。」 「宮川と安田と、さ。奴ら昨日行った店よかったよかったって言うんで。 実はもう話が出来ているんだ、ガハハ、」
その話を聞いて、私の心はぱっと明るくなりました。
ぱっと。
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