J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年12月15日(月)    レイは困った顔で「トイレに行きたい、」と答えました。

J (3.秘密の恋愛)

2. 出張 (12)


会場の準備が済むと私たちは一度自分の部屋に戻りました。
シャワーを浴び着替えをし、ひと息つけてから再びロビーに集まり、
ホテルのレストランで朝食を取りました。

食事をしながら今日の段取り等打ち合わせをし、
9時前にイベント会場に戻り、いよいよ初日のオープンです。

9時より朝礼、10時開場。

長い一日が始まりました。


私は打ち合わせ通りにスタッフを配置しました。
輸入雑貨のブースにはレイを責任者として置き、補佐に鏑木さん。
輸入衣料のブースには宮川を責任者として置き、補佐に安田。
私は両方のブースを行き来してフォローする役に付きました。

最もレイは商品知識を私同様に持っていますので、
私としては輸入衣料のブースに主に常駐することが多かったのですが。


イベントは盛況でした。
足の踏み場もないほどに混雑しました。
当時は円高により輸入品がちょっとしたブームになりつつある時でありました。
何でも売れる、そんな勢いがありました。

私たちは昼の食事も侭ならぬ有り様で、ひっきりなしに接客に追われました。
それであっても皆不平も言わず頑張ってくれました。
営業経験のない鏑木さんすらも前に立って接客をしてくれました。
まったく商品知識がないにもかかわらず。

レイは特に頑張りました。
私と同様の働きをしてくれました。
私とレイがいなくては詳しい説明が出来なくなる事もあり、
レイは食事抜きで一日中立ち通しで接客をしました。

午後4時頃、少し客が引けてきた時初めて私はレイに「どうだい、」と声を掛け、
レイは困った顔で「トイレに行きたい、」と答えました。
、、、レイはトイレも行かずに、接客していたのです。

私はすぐに、「行って来て、ちょっと休んでこいよ、食事もまだなんだろ、」と言いました。
が、レイは、「工藤さんもまだなんでしょ、食事、」と私を気にします。
私は、「いいから、行って来い、休憩30分だ、」と背中を押し、
「30分じゃトイレ行っておしまいか、45分だ、」と言って、さあさあ、と送り出しました。


ところがレイはものの20分ほどで戻ってきました。



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