J (3.秘密の恋愛)
2. 出張 (12)
会場の準備が済むと私たちは一度自分の部屋に戻りました。 シャワーを浴び着替えをし、ひと息つけてから再びロビーに集まり、 ホテルのレストランで朝食を取りました。
食事をしながら今日の段取り等打ち合わせをし、 9時前にイベント会場に戻り、いよいよ初日のオープンです。
9時より朝礼、10時開場。
長い一日が始まりました。
私は打ち合わせ通りにスタッフを配置しました。 輸入雑貨のブースにはレイを責任者として置き、補佐に鏑木さん。 輸入衣料のブースには宮川を責任者として置き、補佐に安田。 私は両方のブースを行き来してフォローする役に付きました。
最もレイは商品知識を私同様に持っていますので、 私としては輸入衣料のブースに主に常駐することが多かったのですが。
イベントは盛況でした。 足の踏み場もないほどに混雑しました。 当時は円高により輸入品がちょっとしたブームになりつつある時でありました。 何でも売れる、そんな勢いがありました。
私たちは昼の食事も侭ならぬ有り様で、ひっきりなしに接客に追われました。 それであっても皆不平も言わず頑張ってくれました。 営業経験のない鏑木さんすらも前に立って接客をしてくれました。 まったく商品知識がないにもかかわらず。
レイは特に頑張りました。 私と同様の働きをしてくれました。 私とレイがいなくては詳しい説明が出来なくなる事もあり、 レイは食事抜きで一日中立ち通しで接客をしました。
午後4時頃、少し客が引けてきた時初めて私はレイに「どうだい、」と声を掛け、 レイは困った顔で「トイレに行きたい、」と答えました。 、、、レイはトイレも行かずに、接客していたのです。
私はすぐに、「行って来て、ちょっと休んでこいよ、食事もまだなんだろ、」と言いました。 が、レイは、「工藤さんもまだなんでしょ、食事、」と私を気にします。 私は、「いいから、行って来い、休憩30分だ、」と背中を押し、 「30分じゃトイレ行っておしまいか、45分だ、」と言って、さあさあ、と送り出しました。
ところがレイはものの20分ほどで戻ってきました。
|