J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年12月13日(土)    それを聞き、私はニヤリとして言いました。

J (3.秘密の恋愛)

2. 出張 (10)


翌朝5時、時間通りにロビーに下りると、
すでにレイと鏑木さんはソファに座って待っていました。
レイにとっては初めての出張、鏑木さんにとっては初めての仕事、
二人とも勝手が分からず緊張した様子でありました。

「おはようございます、早いですね、」私は二人の肩の力を抜くようにと、
おどけたように大きなジェスチャーをつけて言葉を掛けると、
「おはよう、」「おはようございます、」二人とも笑顔で挨拶を返しました。

しばらく雑談、さて行こうか、と言っても宮川と安田が起きてこない。
おおかた寝坊だろうということで内線で呼び出し、案の定、まだ寝てた。
仕方ない、先に行っているぞ、と言い伝え、私たちはイベント会場へ向かいました。


イベント会場はホテルの宴会場でした。
大ホールと中小のホールを全部使っての広い会場でした。
商品に合わせ私たちの展示ブースは二つに分かれていました。
私たちは指定のブースを確認してから役割分担をしました。

私は輸入衣料担当、レイは輸入雑貨担当と分かれそれぞれ準備をすることにして、
「鏑木さん、取りあえず搬入口に届いている荷物を取ってきましょう、」
と私は鏑木さんを促して荷物を取りに向かいました。
「レイちゃんは、そう、陳列棚を雑巾でふいておいて、」と言い置いて。


搬入口には荷物が溢れていました。
なにせ輸入商社が大なり小なり100社以上集まって行われるこのイベント、
運送会社が一括で配送するシステムになっているとはいえ、
現場は人と荷物が入り乱れ、物ひとつ運ぶにも簡単なことではありませんでした。
我先に準備を終えてイベントが始まるまでの間ゆっくりしたい、
そう考えるのはみな同じ、騒然とした雰囲気の中で準備が進められます。

「あった、あった、これこれ、これがうちの荷物だ、」
私はやっと当社のダンボールを見つけて言いました。
「うへぇ、なんだよ、こんな下のほうか、」鏑木さん。
我々の荷物は他社の荷物の下の下、一番下になっていました。

そこへ息を切らせて宮川と安田がやってくる。
「おはようございますっ、すいません!」
「おはよ、いいよ、その代わり、しっかり働いてもらうからな、」と私。
「はいですー、何をやればいいですか、」と宮川。

それを聞き、私はニヤリとして言いました。
「この上の荷物をどけて、うちの荷物を引っ張り出すんだ。」
「よっし、安田、やるぞ、」
「うっす、」
と宮川、安田、汚名返上とばかり威勢良く荷物を担いでは降ろす。


私はひとつふたつ荷物を持って、
「じゃ、あと頼む、俺は商品の陳列をしているからな、」
と言って会場内に戻りました。



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