J (3.秘密の恋愛)
2. 出張 (9)
あの時、私はまだ独身だった。 あの時、レイは新入社員だった。 3年前のあの日、あの頃、あの当時。
その後私は友美さんと結婚し子どもも生まれた。 レイは何人かの男と付き合い女になった(らしい)。 あの日、あの頃、あの当時から、今の私とレイの環境は大きく変わった。
3年でものにしてやる、といった面接の時の約束(参照こちら)も、 今回の出張を契機にそれが現実に果たされようとしつつある。
これで、これでよかった、すべてよかったんだ。
私は横に座るレイを身体に感じながら、心の中でそう思いました。
・・
「レイちゃん、この仕事が成功すれば、また道が開ける。頑張るんだぞ。」
私はついそういう言葉が口からでました。 レイは急に私がそんなことを言ったのでキョトンとしながらも、「はい、」と答えました。
「クドちゃんはレイちゃんにはいつも厳しいな、ま、俺もいるし、みんなで頑張ろうな、」 鏑木さんが口を挟み、そして「ガハハ、」と座を和らげるように笑いました。
タクシーはホテルへ。
私たちはそれぞれの部屋へ。
レイの部屋は私の隣りでした。
「おやすみ、」 「おやすみなさい、」 「じゃ、明朝5時、ロビーってことで、」
部屋は鏑木さん、レイ、私、宮川、安田、と横一列並んでいました。
レイを鏑木さんと私の間にしたのは会社への配慮でした。
何かあっても、変に勘繰られてもいけないので。
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