J (3.秘密の恋愛)
2. 出張 (6)
午後8時をまわっていました。 週末の梅田の町は人で溢れていました。 老若男女入り混じり、勤め人もいれば学生もいる、 上野と池袋と新宿が一箇所に集まったような町、 それが東京生まれ東京育ちの私の目から見た梅田のイメージでした。
交差点で信号待ちしながら宮川が心配げに私に尋ねました。 「工藤さん、座れる店、ありますかね、この混みようで、」 「知らん。安田とふたり、すまんけれど、先行って様子を見てきてくれないか。」 「あ、はい、どんな店がいいんでしょうか、」 「そうだな、」 と言いながら私は鏑木さんの顔をチラリと見ました。 鏑木さんはレイとガハハと笑いながら楽しそうに話している。 「んと、椅子席じゃなく座敷、でね、食事ができる店、だな、」 「椅子席じゃなく座敷、で食事ができる店、ですね、了解、おい、安田、いくぞ。」 とばかり、宮川は安田を連れて走って先に行きました。 あれだけ新幹線の中で飲んでいてもまだまだイケル、そんな感じでした。
やがて安田が走って戻ってきました。 「工藤さーん、どこも開いてないっス、どーしましょ、」 「どーしましょ、ったって、探すよりないよ、、んっと、あそこ、どうだった?」 私はちょっと先に見えたうどん屋の看板を指差しました。 「あそこはー、聞いてないっす、だってうどん屋ですよ、 大阪来てこれからって晩にうどんはないでしょー、工藤さん、」
何言ってんだ、俺たちはメシ食べにきたんだゾ、うどん屋で十分、 それとな、うどん屋ったって、酒も飲めるはずだぞ、ここらへんじゃ、 と言いながら私たちはうどん屋の暖簾をくぐる。
案の定、二階に座敷があり、そこでゆっくり寛げるとのこと、 6月、時期外れだがうどんすきでもどうですか、と店の者に言われ、 鏑木さんも、お、いいね、と。
じゃあ、ここにしようと、一同、二階の座敷へと。
宮川はどうした、そうでした、あのまま店を探している、 おい、安田、探して来い、はい、分かりました、と安田席を立つ。
暫くして宮川と安田戻り、さて、飲もう、ビールだ、酒だ、と賑やかに。
やがて夜も更けていく。
+++お知らせ+++ 明日一日だけ都合により「J(ジェイ)」を休筆します。 よろしくお願いいたします。
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