J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年12月04日(木)    心の奥底にある強いブレーキが二人をそうさせた、のか。

J (3.秘密の恋愛)

2. 出張 (3)


私と鏑木さんが二人掛け、宮川、安田、そしてレイが3人掛け、
と横一列に並んで座りました。
年長者は年長者、若手は若手、というように。
レイは窓側に座り、私も窓側、端と端に分かれて。

意識的にそうしたわけではないのですが、自然とそうなりました。
私とレイに特別の関係があるわけでもないのに。

私とレイは、上司と部下、それ以上も以下もない、普通の関係でした。
仕事上では言葉なくとも気持ち通じるというほどに密接な関係でしたが、
プライベートでは一切の無関係にお互いを置いていました。
まったくもって堂々として疚しいことは何一つない、そういう関係でした。

にもかかわらず、飲み会やら、こうした第三者との交わりの中にあっては、
私とレイは離れて座り、ことさらその無関係を強調する向きがありました。
無意識に。
自然と。

普通であればいいのに、普通にできない。
無意識に意識している。
自然と不自然な身の処し方。

心の奥底にある強いブレーキが二人をそうさせた、のか。

私には妻がいる。
レイには恋人がいる。
私とレイは今以上の関係はない。
上司と部下、これ以上の関係はあり得ない。

そうした現実が無意識に心のブレーキを働かせ、
こと人前にあっては強力な反動的行動パターンとなって現れる、
ということであったように思われます。


しかし、その当時の私は、ただ無意識に自然に、そうあった。

レイもまた、無意識に自然に、そうあった。


すべて、無意識に、自然に、あった二人でした。




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