J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年09月23日(火)    高卒で総合職に就いている者はごく僅かでした。

J (3.秘密の恋愛)

1. 総合職 (14)


私の書いた稟議書は常務会に諮られました。
そこでいくつか質問があり私はその席に呼ばれ答えることになりました。
私は部長の後をついて会議室に入りました。

私の上司の営業部長は仕事においては自分にも部下にも厳しい人でした。
なんとかしよう、なんとかやってやろう、そういう気概がある人でしたので、
やる気のある社員に好かれていました。
私もこの部長にはなんでも相談し、そして部長は常に私を支えてくれました。
私は部長から全面的に信頼を得ていたのです。

レイについて、能力、資質、職務態度等については全く問題はありませんでした。
そのことについては実績が正直に物語っていました。
私はそれらをきちんと数字で表して稟議書に添付しておきました。

人事部長が渋い顔をしたのは、レイの学歴だけでした。
レイは高卒でした。
総合職は大卒以上と取り決めがあるわけではありませんが、
実際に高卒で総合職に就いている者はごく僅かでした。
そのため特に厳しい査定を求められていたようでした。
また彼女は21歳、この先何年勤めるのだ、そんな下世話な問題もありました。


ともかく。
ここを乗り切らないと。

私は気合を決めて、あらん限りの熱意で、あらゆる努力をしたものでした。


ところが。
私が常務会に呼ばれたのはそうしたことについて聞かれるためではなかった、、、のです。
それらについては私の上司、つまり部長の説明で事足りていた。

私が聞かれたこと。
それは出張のこと、だったのです、、、。


・・

経理担当専務が開口一番私に言いました。
(この男、なんにつけ難癖をつける男でした。)

「工藤君、駄目だよ、出張なんて、え?、君、」

「は?」

経理担当専務の目の奥には悪意が見えました、、、。



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