J (3.秘密の恋愛)
1. 総合職 (1)
3年の月日が流れました。
私は33才になりました。
その間私の部署の事業は飛躍的に成長していました。 イタリアのデザイナーと契約、主にアクセサリーの直輸入販売が当たり、 全国の百貨店に展開し次いで衣料品も手がけようかと事業は拡大していきました。
私は営業の責任者として全国の百貨店を回り売り場を拡大、 販売の先端に身を置き直接接客することもしつつ、 年に数度仕入れにも同行しイタリアに出張するといった、 そんな多忙な日々を送るようになっていました。
部下も増え私は課長補佐という立場になっていました。 けれど仕事上の権限は役員に近いものを与えられつつありました。 なぜならその事業は私がなくては成り立たないものになっていたからです。
友美さんとの結婚生活は恙無く良好でした。 もともと家庭的な友美さんは家の一切をきちんとしてくれていました。 ほとんど家にいない私にとってこの上もない出来た妻でした。
当時私は休みなく働いていました。 というより休んでいられなかったのです。 朝早く夜は午前様、もしくは帰らない、月に10日は出張し、 海外出張の時は1週間ほど家を空けました。 まるで母子家庭だね、と笑って友美さんと話していたものです。
それでも友美さんは不平ひとつ言いませんでした。 私は家庭のすべてを友美さんに預け仕事に専念していました。 そんな私を妻として支える、それが彼女の幸せのようでした。 子どもの雪子とふたりしていつも優しい笑顔で私を迎えてくれました。
私は幸せでした。
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