J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年07月25日(金)    私には願いがありました。

J (2.結婚)

14. 生と死 (3)


3月に入り父の容態は急激に悪くなりました。

父の意識は遠く、
声を掛けても僅かに瞳を動かす程度の反応しか示さなくなりました。

このまま何ヶ月持つか、
それが明日なのか、半年後なのか、医師にも分からないこと。

ただ父は生きている。

そういう状態になっていったのです。


母はうすうす分かっているようでした。
多分看護婦さんか医師の診察の折の言葉尻から察したのでしょう。

「いろいろ準備、しとかなきゃね、」などとぽつりと言う事がありました。

私は、知らん振りをして、「何を?」と聞いてみました。
すると母は静かに首をふり、「いろいろだよ、」と答えるのでした。



私には願いがありました。

それは、生まれてくる子ども、その子どもと父を合わせてやりたい。

ということでした。


出産予定日は4月の初めでした。

最低でもそれまでは。

それまではなんとか持ってくれ、、、。



いや持つさ、そして、ひょいっと良くなるさ。

何を縁起でもないことをオレハカンガエテイルノダ!!!



私は父の死に対する準備を一切することを拒みました。



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この物語はフィクションです。

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