J (2.結婚)
14. 生と死 (2)
レイとのことは既に私の中では過去のこととなっていました。
そんなこともあったのだろうか、そう思うほどに遠い記憶になりつつありました。
父の入院生活、そして友美さんの出産を控えている今、 私のキャパシティにはレイへの感情は入りきらないものだったのでしょう。
私は仕事の他は、父母のことと友美さんのことで一杯一杯だったのです。
もとより、そんな折に恋愛にウツツを抜かしているほうがオカシイわけで、 平凡でティピカルな私は平凡でティピカルに過していたということです。
レイもうすうすそんな私の環境を知ってか、 これまで以上に私のフォローをそつなくこなすようになり、 この頃よりレイは私にとって仕事上で掛け替えのない存在になってゆくのでした。
私にとって本当に頼り甲斐のあるスタッフ、それがレイとなっていったのです。
レイに恋人がいようがいまいが関係ない。 仕事においてのレイは私にとって掛け替えのない存在。
そういうことです。
・・
持ちつ持たれつ。
お互いのプライバシーには触れず、思いやりをもって。
恋愛ではない信頼関係。
そんな関係が築かれていった頃、でした。
と、私は独り善がりに思っていた、ということです。
レイの本心は分からないので。
|