J (2.結婚)
14. 生と死 (1)
新年が明け友美さんは予定通り実家に帰りました。
私は自分の実家と友美さんの実家、そして父の病院を行ったり来たりして、 慌しく新年を過ごしました。
父は特に悪い様子も見えず、癌であることを知らない母の憂いはなくなって、 母にとっては父の退院できる日を心待ちにしながら過ごす正月でもありました。
父方の親類には父の入院を知らせてはおいたのですが、 見舞いにくると父が煩わしく振舞うことが目に見えていましたので、 私はできるだけ丁重に見舞いをお断りしておきました。
しかし、身近に住む叔父だけには、私はこっそりと打ち分け話をしてはおきました。 それとても、もう半年とか、一年という話は伏せて、でしたが。
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実家に帰った友美さんは、お義父さんお義母さんによくしてもらい、 すこぶる順調に過ごしていました。
なんやかやと生まれてくる子どものために揃えるものを揃え、 準備万端にしてくれるお義母さんに、私は頭が下がりっぱなしでした。
子どもを産む、それは男は経験ができないこと、知り得ないこと。
そしてそれは経験者でなければ分からないことばかりです。
私は義母と友美さんの様子を見ながら、 男の小ささ、無力さを感じずにはいられませんでした。
男は子どもを産むことに対して協力はできますが、 最後のところでは手を合わせて祈るよりないのです。
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