J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年07月22日(火)    「希望はないのでしょうか。」

J (2.結婚)

13. 父の入院 (17)


「そうですか。やはり、、、」
「半年、もしかすると1年、こればかりはなんとも。最善は尽くしますが、、、。」
「希望はないのでしょうか。」
「、、、希望、は持っていてください、しかし、その覚悟も持っていてください。
 今のところそれ以上には言えないのです。」
「3ヶ月、と前の病院では言っていました。そういうこともあり得るのですか?」

この私の問いかけには主治医の先生は言葉を発しませんでした。
ただ厳しい顔をして頷いた、それは私に覚悟せよという意味でした。


私の覚悟はこの数日間でできていました。
母には、最後の日まで直接に言わないでおこう。
私はそう心に決めていました。

友美さんにも。
知美さんの実家にも。
知らせずにおこう、子供が生まれるまでは。


・・

イブの晩、私は友美さんに告げました。

父は胃潰瘍で入院した。
まぁ、酒の飲み過ぎだ。
医者は心配ないと言っている。
君も心配するな。

そして実家のお父さんお母さんには何も言うな。
父はああいう性格だ。
見舞われたりするのが苦手だ。

だから、うん、そういうことで承知しておいてくれたまえ。


友美さんは黙って頷きました。

そして、私の手をとり、その手を自分のお腹にあてがいました。


、、、ね、分かる、動いてるの、。


お腹の中で子どもが元気に動いていました。

その元気に触れ私は奮い立ち、よっし、へこたれないぞ、という気になりました。


生と死と。


その狭間で。


(13.父の入院、の項 終わり)


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