J (2.結婚)
13. 父の入院 (16)
翌日。
父は紹介された総合病院に転院し、精密な検査を受けることになりました。
年若い、しかし優秀に見える先生が主治医として付いてくれ、 上から紹介で入院した父は特別な待遇を受けているようで、 私も両親も身分不相応な待遇に戸惑いながらも安心したものでした。
私は母に父の病気がどんな疑いがあるのか、一切話しませんでした。
その点についても主治医になった先生は理解をして下さって、 「そうですね、はっきりしたことがまだ分からないうちは、 不安になるようなことを知らすのは避けましょう。」 と言ってくださり、私は尚の事この先生に信頼を寄せたのでした。
母は敢えてそのことを聞きませんでした。 父は一切自分の病気について聞こうとしませんでした。
ふたりとも真実を聞くことが怖かったのであろうと思います。
私とて父がまさか癌だとは今だに半信半疑でした。
あのやぶ医者の診たてなんか信頼できるわけないじゃないか! そんな思いでいたものですから。
たとえその兆候があったとしても、 検査もせずに、治療を試みもせずに、あと3ヶ月なんてよく言ったものだ、 そんなふうに思っていたのです。
・・
ところが。
3日後に聞いた検査の結果は、、、
あのやぶ医者との診たてと変わらないものでした。
食道癌。
、、、そのことを聞いた時私は些かも動じませんでした。
既に覚悟はできていた、そんな私でした。
その日はちょうどクリスマスイブだったかと記憶しています、、、。
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