J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年07月16日(水)    いいですか、お父さんは、癌、です。

J (2.結婚)

13. 父の入院 (11)


院長室には私一人が入りました。

母は何かを感じたのか、「純一、聞いてきておくれ、」と言い残し、
父のいる病室へと向かいました。

私は母の不安も分かるような気もして、無言で頷いて母の後姿を見送りました。


院長室のドアを開けて名乗る私。
「どうも、工藤です、息子です。お話を聞きに参りました。」
「どうぞ。」
奥から聞こえた声は皺枯れた老人の声でした。

私はおずおずと中に進み、院長先生らしき人を認めその傍らに立つ。
「どうぞ、お掛けください。」
「はい、」
私は丸い椅子に腰掛ける。

院長は私の顔をじっと見て、話し始める。
「えっと、息子さん、ですか、お母さんは?」
「話は私が聞くようにと、なにせ、昨日の今日ですので、取り乱しておりまして。」
「分かりました。」
「先生、まだ検査が済んでいないんじゃ、」
「そう、しかし、これはこの病院では治療が難しい病気なのです、
 専門の病院でよく検査された方がいいと思うのでお話するのです。」

皺枯れた声が私の耳に響く。

なんだって?検査もろくにせずに、、、。何がどうだって!?



「先生、よく言っている意味が分からないのですが。」

「、、、いいですか、お父さんは、癌、です。それももう持ってあと3ヶ月、、、。」




一瞬の沈黙

私の頭の中はぐるぐるぐる




、、、な、なんだって、おい、。


癌!?


もってあと3ヶ月!?


なに言ってんだ、このじじい!!!


このヤブ医者め!!!



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この物語はフィクションです。

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