J (2.結婚)
13. 父の入院 (10)
父の入院した病院は実家から車で30分ほどのところにありました。
8時過ぎに会社に電話を入れて、午前中だけ休みを貰い、 私は母と連れ立って病院に向かいました。
着いてみるとそこは古ぼけた病院でした、 こんなところで大丈夫かいな、私は一瞬不安を持ちました。
ですが母の手前です、そんなことはおくびにも出さずにいました。
母は私に、先に純一だけ会ってきてくれるか、と言いました。 何故なら母は父から私に連絡するなと言われていたからです。 機嫌がよさそうだったら呼んでね、 母はそう言ってロビーで待っていることにしました。
病室では父は痛々しい姿で寝ていました。
いろいろな管が鼻やら腕やらから差し込まれていて、 ちょっとやそっとのことではない、そんな印象を持ちました。
私が近づいて顔を覗き込むと父は目を開きました。
「純一か、」 「はい、でも、たまたま来たんです、そうしたら入院だなんて、」 「、、、。」 「お母さんが呼んだんじゃないよ、偶然、なんだよ、」
父は怒ることはありませんでした。 それよりも私の顔を見るなり、安堵が広がったような表情になりました。
「そうか、」 「お父さん、先生は何て言っているの?」 「これから検査だから、何とも言ってない、」 「そうなんだ。。」
私の目には父はかなり悪いように映りました。 気丈な父がこんなにまで弱々しく私と話すなんて、 たぶんこれはなにか悪い病気に違いない、そう思いました。
が、まさかね、まさかね、 命に関わるほどじゃァ、ないっしょ。
「お母さんもきているんだ、お父さん、ちょっと待っててね。」
私は病室をでて母を迎えに行く。
部屋をでるなり私は看護婦さんに呼び止められました。
「工藤さんのお身内の方、ですか?」
「そうですよ。」 「院長先生がご家族の方にお話があるそうです。」
「これから、ですか?」 「よろしければ、これからでも。」
「では。ちょっと待っててください、今母を呼んで来ますから。」
私は足早にロビーに行き母を呼んできました。
そして私は看護婦さんに案内され院長室に向かう。
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