J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年07月13日(日)    「純一さん、お義父さんの様態、どうなの?」

J (2.結婚)

13. 父の入院 (9)


朝はすぐにやってきました。

4時半の始発電車に乗り途中で友美さんに電話を入れて。

自宅に戻ったのは5時半頃でした。

「ただいま、トモミさん、支度できてる?」
「おかえりなさい、純一さん、うん、」

私は部屋に入るなり友美さんの出してくれてあったスーツに着替え、
再び靴を履いて出掛けようとしました。

「純一さん、お義父さんの様態、どうなの?」
「いや、別に大したことはないそうだ、ただね、一応見舞いだけ行ってくる。」
「私は?、行かなくていいの?」
「うん、その必要はない、だって大したことはないそうだからさ、
 なんでも自分でタクシーに乗って病院にいったそうだし、
 検査のためにちょっと入院するだけだそうだから、心配ないってことよ、」
「ふ~ん、」
「君は君のこと、君と君のお腹の中にいる子どものことだけを考えていて、ね。
 それがオレの父や母の希望だよ、だから、気にしないで、」
「、、、うん、分かった。」

友美さんは安心したように柔らかな表情で私に応えました。



私は友美さんに対し父の症状について嘘をつきました。

けれど父や母の希望は友美さんに心配をかけたくないことにあるのですから、
あながち間違った嘘ではありません。

父は母に「純一には知らせるな、」とまで言って、
友美さんに心配をかけまいと配慮したそうなのですから。(参照こちら



私は友美さんの頬に軽くキスをしてから、
「じゃ、行ってくるね、」と言い右手をちょっと上げて家を出ました。

友美さんはにっこりして、
「気をつけてね、いってらっしゃい、」と軽く右手を振り私を送り出しました。


・・

車を駈って再び実家に戻る私。

本当に、本当に大したことじゃなければいいんだけどな。

次第に白々と明るくなってゆく高速道路を走りながら私はそう思いました。



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