J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年07月11日(金)    「お母さん、どうしたの?、お父さんに何があったの?」

J (2.結婚)

13. 父の入院 (7)


実家に着くと曜日は既に翌日になっていました。

母は私が来るのを今か今かと待っていました。

そして、私の顔を見るなり黙って泣き出しました。


「お母さん、どうしたの?、お父さんに何があったの?」

しかし。
それほどおおごとならばもっと早くに連絡してくれればいいものを。
こうして母が家に一人いるのはいったいどういうことだろう。
付き添っていなくていいの?
だいたい、なんで入院したの?
いったい何がどうしたの?

私は泣き崩れている母を見やりながら心の中で問い掛けました。

ここに父がいないってことは確かに入院したんだろうよ。
だけどこれじゃぁ状況がまったく分からない。

ともかく、母を落ち着かせなくっちゃ。


「お母さん、もう大丈夫だから。オレが来たから、ね。大丈夫。安心安心。」

私は母の肩を抱きながら、微笑んで見せました。
すると母はいくらか安心したようでした。
そして、「すまないね、、、。」と言いました。


・・

私はお茶を入れて、ゆっくりと母の話を聞きました。

母は事の次第を順を追って話し出しました。

ぽつりぽつりと。


実は私の結婚式以前から具合が悪かったこと。
純一の結婚式だから、と言って私にはそのことを隠していたこと。

昔気質の人間なので病院に行って検査したことがないこと。
ここ数日、特に様子がおかしくなって苦しそうにしていたこと。

けれど、それでも母には何も話さずに自分一人で耐えていたようだったこと。
見かねて病院に行ってみたらと母が声を掛けると怒るので手を焼いていたこと。



ところが今日。

吐血したとのこと。



そうとう苦しそうだったこと。

救急車を呼ぼうとしたこと。

それを怒って止めさせられたこと。


自分で歩いてタクシーを止めて病院に行ったこと。

すぐに検査して入院したこと。

意識はしっかりあること。



純一には言うなと言われたこと。

妊娠している友美さんにくだらぬ心配をかけてはならん、と言って、、、。



自分一人で大丈夫だ、お前は帰れと言われたとのこと、、、。


、、、母は再び泣いて言葉を失いました、、、。



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