J (2.結婚)
12. 指輪 (11)
あれこれ考えているうちに私たちは店を出ました。
「どうします、工藤さん。歌でも歌いに行きましょっか。」安田。 「ああ、っと、今夜はオレ帰るから、悪いな、」私。 「ええ!、帰っちゃうんですかぁ!まだ9時ですよ、」安田。 「、、、やっぱな、初日だし、」私。
聞きつけた鏑木さん、大層酔っ払って、 「くどちゃん、もう一軒ぐらいいいだろ、」と強引な口調で私を誘います。 「はあ、でも、」と私。 「最初が肝心なんだぞ、俺ん時なんかは午前様だったさ、」鏑木さん。 そういう言われ方をしては私も引き下がれません。
「ええ、そっすよね、じゃ、もう一軒だけ、」 、、、私は後先考えずにそう答えました。
・・
その後カラオケに行き、2時間ほど飲みながら歌いました。
私はまたずいぶんと酔っ払ってしまいました。
ただ酔っ払ってもレイとの距離は十分以上に保っていました。
酔ってレイが近くにいたら、再び何かが起きてしまうかもしれない。 そうした自分の弱さをよくよく心得ていたようです。
それはレイも同じ。
レイはこれ見よがしに指輪を披けしていました。
かたく私を拒むレイの態度でした。
私は杉野佳菜とデュエットはしましたがレイとはしませんでした。 レイは私以外のほとんどの男と一緒に歌いました。
明らかに意識的に距離を置いているふたりでした。
この距離は私とレイだけがわかる隔たりでした。
|