J (2.結婚)
11. 変貌 (10)
私の心のうちにはかなりの動揺が走りました。 たぶん何かあったとは想像できたとはいえ、 唐突に「彼ができた、」と聞かされてはさすがに私も返す言葉を失いました。
かろうじて言った言葉。
「そ、、、。そうか、」
誰? どんな人? そいつの趣味かい、その栗色の髪? そいつと、そいつとやっちまったのかい?
・・心が揺れる。 だめだ。これじゃ、だめだ。全然平気な顔しなくっちゃ。
私は努めて平然とした口調を繕う。
「あの、前に言っていた、その、年上の人、は、どうしたの?」
私の目をまじまじと見詰めるレイ。
「別れました。言いませんでしたっけ、とっくの昔に別れたってこと。」
とっくの昔!
じゃぁ、、、
私はもしかしたらレイは私に憧れているのではと微かに思っていた。 レイの言っていた年上の人っていうのは自分のことじゃないかと。
人を好きになると自分に都合よく何でも考える。 そんなことは分かっているさ!
だけど、だけど私は心の片隅にそういうほのかな思いを持っていた、、、。
じゃぁ、違うんだ! オレのこと、言っていたんじゃないんだ!
そうだったんだ、、、
、、私は唇を噛み締めながら、けれど、さらに努めて平然に言葉を話す。
「そ、、、そうだったっけ。別れた、そんな話、聞いてたっけ。 だって、オレ、トモミさんとの結婚で頭が一杯だったから、」
無言のレイ。 言葉を続ける私。
「ふ〜ん。じゃ、最近知り合った彼、ってわけだね。 で、なんでそんなことオレに話すの?」
「上司として聞いておいて欲しかっただけです。 工藤さん、私に言いましたよね、 『僕がよしと言った相手でなければダメだぞ、』って。(参照こちら)だから、です。」
、、、だから、ですって、言ったって。
その、そいつと君は結婚でもするっていうのかよ!
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