J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月06日(金)    ところで工藤君、レイちゃんのことだが、、、

J (2.結婚)

11. 変貌 (5)


朝礼が終わり私は部長と応接室に入りました。

ソファに腰掛けるや部長は冗談っぽく笑いながら言いました。

「で、友美ちゃんがどうした?まさか喧嘩でもしたって、
 そんなことを言うんじゃないだろうなぁ。」

私は「いえ、」と言葉を切ってから、
「実は、、、」と友美さんの切迫流産のことについて話し始めました。


実は友美さんは妊娠していること。
結婚式から新婚旅行と無理が続いたこと。
新婚旅行を途中で取りやめて帰ってきたこと。

そして、切迫流産になったこと。

「、、、ですが、医者に言わせると安静にしていれば問題ない、
 そういうことですのでご心配頂くほどのことではないのですけど、、、」


部長は私の話が終わったとみて2〜3質問しました。
「それで今友美ちゃんはどうしてるんだい?」
「家で寝ているはずです。」
「そうか、君も結婚早々大変だな、暫くは早く帰れるようにしたらいい。」
「それには及びません。実は友美さんのお母様が来てくださっていて、
 家事とか身の回りのことをやってくれています。」

部長はふんふんと頷きました。

「万が一の時のために部長のお耳にだけは入れておくべきかと思いまして。」
「分かった。このことは俺の胸にだけにとどめておく。」
「よろしくお願いいたします。」

そこで部長はタバコを取り出して一服点けました。
大きく吸い大きく煙を吐く部長。
じっとしている私。

・・

「ところで工藤君、レイちゃんのことだが、」

私は(きたな、)と思いました。
部長はまじまじと私の顔を見てから言いました。

「彼女、変わったと思わんかい?、、、いや、外見だけじゃなく。
 本質的に何かが変わったように。」
「、、、。」

タバコを深く吸う部長。
黙って話の続きを待つ私。

「いや、俺はプライベートなことは口を挟まない主義だ。
 髪を染めるのも度を越えていない限り何も言わん。
 ただな、指輪はどうかと思う、君の方から注意してみてくれんかね。」

上から下への威圧感。
私はレイの顔を脳裏に浮かべる。
沈思黙考する私。
そして、少しして、
「はい、よく言っておきます。」と私は答えた、、、


部長は話が済んだとばかりタバコをもみ消し、
「じゃ、がんばってくれ、君はわが社のホープなんだからな、」
と言って応接室を出て行きました。

私は考え考え部長の後に続き部屋を出る。

考え考え。

レイに何かあったんだろうか、、、と。


・・

自席に戻るとレイと鏑木さんと矢崎が顔を揃えて私を待っていました。

そうだ、不在中の報告を聞くんだった、、、

「会議室、空いているようだからそこで。」

矢崎は私が戻るなりすぐに席を立ってそう告げました。



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