J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年06月04日(水)    部長にだけは切迫流産のことを報告しておこう。

J (2.結婚)

11. 変貌 (3)


そうこうしているうちに多くの社員が出社してきました。

私はレイの変貌、そして薬指の指輪に気を取られながらも、
出社するごとに身近な社員に挨拶をし結婚式のお礼を言いました。

そのうちに気の知れた同僚に囲まれて、
新婚旅行の話やら新しい生活の話やらをさせられて、
レイのことをどうこう考えている場合ではなくなっていました。



やがて部長が出社してきました。

私は部長席に出向き改めて結婚式のお礼と出社の挨拶をし、
部長はにこやかに私の肩を叩き「頑張れよ」と声を掛けてくれました。

私は咄嗟に部長にだけは切迫流産のことを報告しておこうと思いました。

友美さんに何かあった時。

そう、何かあった時のために、、、。


私は声を落として話しかけました。
「ところで部長。折り入ってお話したいことがあるのですが。」

部長は真顔の私の顔を見て、うん、と頷きました。
すべて了解した、とそういう顔付きです。
そして、「樋口君(レイ)のことか?」と聞き返してきました。


レイ、、、。

髪を染め薬指に指輪を嵌めたレイ、、、。


一瞬私はレイのほうを振り返りそうになりました。
が、首を半分回したところで再び元に戻し、
「部長、それもそうなんですが、友美さんの、その、」
と言いました。

部長の目元がピクンと動きました。
何かあるな、そんな表情でした。

「分かった、朝礼が終わったら応接で話を聞こう。」
「よろしくお願いいたします。」
私は深々と頭を下げました。



自席に戻るとレイが私の隣にいる。

香しい甘い香りが私を包む。

以前は無臭だったレイ。


私はレイにオンナを感じる、、、。



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