J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年05月13日(火)    私はそれが深刻な事態とはまだ思いませんでした。

J (2.結婚)

9. 切迫流産 (8)


私にとってはそれは青天の霹靂、突然の事態でした。

急に座り込んでしまった友美さんについて、
ただどうしたことかと問い掛けるよりありませんでした。

友美さんはこの世の終わりかというくらいに青ざめていました。


「どうしたの?、トモミさん、」

私は座り込んだ友美さんの顔を覗き込むようにして聞きました。

友美さんは、「ごめんなさい、気持ち悪くなっちゃって、」と答えました。



私はそれが深刻な事態とはまだ思いませんでした。
仕方ないなぁ、こんないい景色なのに、と舌打ちしたい気分でした。
何故なら私は友美さんからは何も聞いていなかったのですから。

友美さんが朝から下腹部に異常を感じていて、
私にそれを伝えることができずにずっと我慢していたなんて、
本人の口からはっきりと伝えて貰わなければ分からないじゃないですか。

せっかく、せっかく、良かれと思ってエスコートして、
大室山の頂上に着いた途端座り込んで気持ち悪いなんて、
なんだよ〜、って感じに思ってしまっても当然じゃぁないですか。


いや、今思い出すと、もっと配慮が必要だった、、、そう思います。

ですが、その時は私も若かった。
人を思い遣る気持ちがまだまだ足りなかった。

、、そこには調子に乗った愚かしい私しかいなかったのです。



それで、その時の私は友美さんに悲しい言葉を掛けてしまうのです、、、。

「トモミさん、具合が悪かったら早くに言ってくれたらいいのに、
 ここは頂上だし、休むところもない。
 もう、オレだって二日酔いのところを頑張っているんだぜ。
 君との大切な新婚旅行を楽しい思い出にしようって思ってね!」

ちぇっ、という思いが込められた言い方でした。


友美さんは私のキツイ言葉にショックを受けたように見られました。

(私だって、、、私だって純一さんに楽しくして貰おうと思って、
 だから頑張ってここまできたのに、、、!)

、、友美さんはそんな思いだったのかも知れません。



「大丈夫。」友美さんはキッとした表情をして立ち上がりました。

私はそんな友美さんを可愛くないと思いました。

「大丈夫なわけないだろ!、そんなふらふらで!
 無理するなって。君の身体は君だけのものじゃないんだぞ。」

私はことさら語気を強めて叱るように言いました。



友美さんは無言でした。

私は、「すぐに下に降りよう。」と言ってすたすた歩き始めました。

友美さんは無言で私に従いました。



気まずい雰囲気が漂うふたりでした。



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