J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年05月12日(月)    ああ、私は妊娠について、あらましの知識は持っていたはずなのに!

J (2.結婚)

9. 切迫流産 (7)


大室山の麓に着く頃、友美さんはたいそう具合が悪くなっていました。

下腹部の痛みは今朝ほどよりも収まっていたそうですが、
身体がだるく思うように動けなくなっていました。

それでも尚友美さんは私にそれを伝えませんでした。
何故かと言うに、私は陽気に明るく楽しそうに振る舞っていて、
そんな私を見ると、友美さんはどうしてもそのことを言い出せなかった、、、。


、、、悪循環、でした。


私は友美さんに楽しく旅行をしてもらいたいと思う。
友美さんはそんな私の気持ちに答えたいと思う。
なので、自分の体調の変化を私に伝えられない。


ああ、私は妊娠について、
あらましの知識は勉強して持っていたはずなのに!(参照こちら


その時の私は!
ことの全てを注意深く考えようとはせずに、
自分の都合のいいように考えていただけ、だった、、、。


そこには調子に乗った愚かしい私しかいなかったのです。


・・

駐車場に着き車を降りると友美さんの足取りは重かった。

私は友美さんの体調の異変を知る由もなかったので、
(まだ疲れが残っているのかなぁ、)というように思いました。

それで少しでも安心させようと、
「友美さん、しっかりしろって、リフトにのって上に上がるだけなんだからさ、」
と肩を押すようにしてリフト乗り場まで歩かせました。

友美さんは表情だけは明るく振る舞っていました。


・・

私たちはリフトに乗って頂上に。

そしてリフトを降りる、、、。


そこは360度の大パノラマ。

ぐるりと見渡すと、富士山、伊豆七島、南アルプス、、、。



私は友美さんの肩に手を回し言葉をかける。明るく清々しい声で。

「ね、トモミさん、素晴らしい眺望だね、」


その言葉に友美さんは凭れたように身体を私に預け、

「うん、ステキ、、、」とか細く言って、


私の顔をすまなそうに見て、


そして、座り込んで、しまった、


そこに、、、。



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