J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年04月10日(木)    そして、、、。私と友美さんは浴衣を脱ぎはじめる。

J (2.結婚)

7. 初夜 (4)


「トモミさん、あのさ、ここ、」

私は“家族風呂”を指差して友美さんに話しかけました。

「“家族風呂”だってよ、つまりぃ、ふたりっきりで入れるんだ、
 どう?一生に一度の思い出作りってことで、ふたりで入ってみる?」

、、友美さんは、うん、と言うのは気恥ずかしそうにして、
え?、という顔をしました。でもそれは拒絶のようではなかった、、。


「ちょっと覗いてみよう、誰か入っていたらダメだしね、」

私は努めておおらかに言って、“家族風呂”の扉を開けました。
中には誰も居らず、ちょうど空いているようでした。

私は友美さんを促して中に入り、お風呂の様子を窺いました。

友美さんも、やっぱり興味があったのでしょう、隅々見回して言いました。




「純一さん、ここって勝手に使っていいの?」

「いや、勝手にはダメなはずさ、ことわってからじゃないと。」

「じゃぁ、やめ。だって恥ずかしいわ、人に知られるの。」

「どうして、何もエッチなことするんじゃないんだからさ。
 ふたりっきりで水入らずに温泉を楽しもうって趣向なのに、、、。」



そうこう言っている時に風呂の係りの人がタイミングよく顔をのぞかせました。

「あ、お客さん、どうされました?ここお使いになるんですか?」

私はとっさに言いました。

「そう、でも予約していないから、どうかなって思ってね、
 今から使ってもいいものかお聞きしようと思っていたところなんですよ、」


風呂の係りの人は私たちをじろじろと見、そして言いました。

「お部屋はどちらでしょうか?ちょうど今空いているようですから、
 お使いになってもよろしいですけれど、、、ただ、料金がかかりますよ、」

「うん、料金はいくらでもいい、部屋につけといて下さい、」

「分かりました、ちょっとこちらでお待ちになっていて下さい、
 フロントに連絡してきますから、、、」

そう言って係りの人はいったんそこを下がりました。



私は友美さんを見て「お願いしちゃった、」と言いました。

友美さんは観念したような顔をしていました。
が、嫌そうでもなかったように見えました。

・・


しばらくして係りの人が戻ってきました。

「結構ですよ。時間は6時半までですけれど、どうぞごゆっくり。」

「ありがとう、」


(でね、僕たちは新婚旅行なんだ、だからエッチなんじゃないよ、)

私はそう付け加えようとしましたが止めておきました。
言ったところで何も意味をなさないからです。




そして、、、。


私と友美さんは浴衣を脱ぎはじめる。


“家族風呂”の狭い脱衣場で。


ふたりっきりで。



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