J (2.結婚)
7. 初夜 (2)
私は番頭さんに名前を告げ、今日の予約を確認してもらいました。
番頭さんは私たちの荷物を受け取り、部屋まで案内してくれました。
しばらくして係りの女性が宿帳を持ってきて、私はそこへ記帳しました。
工藤純一、そして、妻、友美、と。
書きながら私はちょっと照れて、 友美さんに「妻、だって、」と笑顔を向けました。 友美さんもまた顔を赤らめて、ただ下を向いたものでした。
係りの女性に私は「新婚旅行なんです、よろしく、」と、 弁解するようにことさら大きな声で話しました、照れ隠しのように。
部屋は和室でした。
記帳がすむと私は立ち上がり、窓を開け外の景色を眺めました。 そこは街中でしたので、向かいの旅館が見えるだけでしたが。
食事は6時ごろでよろしいでしょうか?という係りの女性の問いに、 私は、ええ、それで、とお願いをし、ちらと時計を見ました。 5時を過ぎたころでした。
私は少し考えてから、やっぱり7時に、と訂正しました。 ゆっくり温泉に浸かりたい、そう考えたからです。
・・やがて係りの女性は茶を入れてから下がりました。
「やれやれ、っと、友美さん、くたびれた?、」
「ううん、大丈夫、純一さんこそ、運転おつかれさま、」
「まあね、ちょっとくたびれたかな、昨日の今日だし、、、 さ、温泉に入ろう、食事の時間まで時間あるからさ、」
「露天風呂、あるんだよね、楽しみ〜、、」
・・
お茶を飲み、一服つけてから、私たちは浴衣に着替えます。
友美さんは恥ずかしそうに部屋の隅で着替えました。
私は部屋の真中で「なんだよぉ〜、こそこそとぉ〜」とか言い、 そう言いながらも顔は笑って友美さんを眺めていました。
実は、、、。
新妻の着替える一部始終を見ながら私の気分は高まり、 私はなんとかものになりそうな“自分”を見出していたのです。
私はそれが静まるのを待ってから着替えました。
浴衣では目立ってバツが悪いものですから、、、。
|