J (2.結婚)
6. 錦ヶ浦にて (5)
一歩一歩、階段を下る私と友美さんでした。
潮風が友美さんの肩までのびた髪を揺らします。
私は彼女の髪を撫で、またキスをしたくなるのです。
黒く艶やかな友美さんの髪。
私は大好きでした。
私は今ならば友美さんを満足に抱けるのではないか、 そんな精神状態に自分がなったことを悟りました。
何故なら、何故なら私の“私自身”が強く反応していたからです。
熱く、熱く、熱していました、、、。
実は私は友美さんの妊娠を知って以来、 彼女とひとつになることを避けていました。
あの晩私の“私自身”はものにならなかった、 それが繰り返されるのを恐れていたからです。(参照こちら)
しかし。
そう思った瞬間、私はまた萎えてくる自分を感じました。
さきほど思ったことを思い出してしまったからです。
友美さんのお腹には、、、
生まれたばかりの命が静かに息づいている。
私たちが景色に見とれている間も、 私たちがキスしている間も、 私たちが、そう身体を重ね合う時も、、、
そのことは友美さんには内緒にしてありました。
それを言うと彼女はまた、
自分のせいだと彼女自身を責めそうでしたので。
しかし、なんとかしなくては。
もうすぐ、私たちは初夜を迎えるのだから、、、
(6.錦ヶ浦にて、の項 終わり)
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