J (2.結婚)
5. 新婚旅行 (7)
友美さんは、「ハゼベくん?、」と語尾を上げて聞き返してきました。
その言葉の調子には、私は特別なものを感じ得ませんでした。
「そうそう、長谷部君、、、。彼、どんな人?、」
私はさりげなく普通に聞いてみました。
私はこの問いに対する友美さんの答えに、全てを預けようと考えていました。
というのは、、、こういうことです。
私は友美さんの言葉の中に何もないことを感じていました。 そう信じることが本当のことだと考えました。
長谷部健二は、ただの幼馴染、それだけのこと。
…言外にそういう雰囲気を感じさせるような、そんな友美さんでしたから。
昨夜私が感じた胸騒ぎ、ジェラシーや疑問、、、 それらは私の一人よがりであったのだと、私はそう結論づけよう。 運転をしながら私は心の中でそう決めました。
聞きたいことは、やっぱりある。 私は昨夜の疑問を数々思い出す。(参照こちら)
しかし根掘り葉掘り聞くことに価値があるのだろうか?
友美さんと長谷部健二はどの程度の付き合いがあったのだろう? 幼馴染とはいえ呼び捨てで呼び合う程のあの親しさは? 声をかけてもいないのにワザワザ結婚式の二次会に来たのは何故?
、、、あの電話の男?
友美さんに結婚を5年待って欲しいと電話を掛けてきたという男は?
君は何故あの時オレを見てくれていなかったの?
しかし、、、
聞いてどうする?
恋愛に過去なんか関係ないのに。
目の前の相手を愛する。信じる。
それだけなのに。
まして、オレと友美さんはもう結婚して夫婦となったというのに!
内心は、、、聞きたくて聞きたくて仕方のない私。
けれど私は、、、聞くのはやめようと決めた。
その私にとっては、 「そうそう、長谷部君、、、。彼、どんな人?、」というこの問いは、 この問いに対する友美さんの答えだけで、私の全ての疑問を解決しよう、 そういう意思と意味を込めた、たった一度、これっきり、という、 自分としてはここに葛藤の終止符を得んとする、そんな思いを込めた問いでした。
(難しい奴だな、、、このオトコ、)
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