J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年03月24日(月)    聞きたいことはこういうこと。

J (2.結婚)

5. 新婚旅行 (8)


昨夜友美さんは私の前で、あれほど「ケンジ」、「ケンジ」と、

あの男、長谷部健二のことを親しげに呼び捨てで呼んでいたのに、

今私に聞き返した言葉では、「ハセベくん?」と名字でした。



私は一瞬、友美さんに私の心のうちのジェラシーを見透かされて、
友美さんはちょっとの慎重さを言葉に込めてそう言ったのかとも思いました。

…ほんの一瞬です。ほんの一瞬だけ、パッと心によぎっただけです。

友美さんの言葉の調子には、私は特別なものを感じ得ませんでしたから。



「そうそう、長谷部君、、、。彼、どんな人?、」

友美さんは(何故そんなこと聞くの?)という、そんな顔をして、

「どんな人?、って?、」とまた聞き返してきました。



私の頭の中はくるくる回りました。
聞きたいことはこういうこと。
君にとってあの男はどんな人なのかっていうこと。

あの男とドレくらい親しいのかっていうこと。
あの男とどんな付き合いがあったのかっていうこと。

確かに君にとっての初めての男はオレだよ、それは分っているよ。
そんなことを言っているんじゃない。

今、君が思うにあの男は君にとってどういう存在なのか、
それが知りたいんだよ。


昔は仲が良かった、今も仲が良い、しかしそれは幼馴染として。
それだけのこと。
それだけのことなんだよね、、、。


しかし、あの男はオレよりも君のことを知っている。
君の子供の頃から今までのこと。
オレの知らない君をあの男は知っている。

く、くやしい、、、。


あの男じゃないのか!
結婚を5年待って欲しいって電話をよこしてきた、あの男じゃないのか!

、、、。


だが。


けれども。


私は、、、聞くのはやめようと決めたんだ。

だから、だからだからだから、

ちょっとだけ、教えてくれよ。


あいつはどんな奴なのか、ってことだけを、、、。



私は運転に注意しながらタバコに火をつけました。

友美さんはいつも通りに、すっと灰皿をだしました。



私は一服をつけてからにこやかに話を続けました。

「ありがとう、、、。どんな人って、つまり、さ、子供の頃とか、
 今何やっているのかとか、う〜ん、小学校が一緒だったんだっけ?」


友美さんはなあ〜んだ、という顔付きで答えます。

「そういうこと?、うん、小学校も一緒だし、高校も一緒だったのよ、」



高校も?



  < Pre  Index  New >    


INDEX+ +BBS+ +HOME+ 
この物語はフィクションです。

My追加

+他の作品へのリンク+・『方法的懐疑』(雑文) ・『青空へ続く道』(創作詩的文章)