J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2003年01月07日(火)    次の瞬間、私は、、、レイを抱き締めていました。

J (1.新入社員)

6. 初めてふたりで飲んだ夜 (14)


暫く沈黙が続きました。

私もレイもフロントガラス越しに前を見ていました。

徐々に近づいて来る別れの場所、、、。



私はとてつもなく寂しい思いに駈られながら、

とは言え、どうにもできないことを痛感していました。



私には友美さんがいて、そして来月結婚する。
友美さんは既に妊娠している(可能性がある)。

私は友美さんが愛しい。大切にしたい。
友美さんは私を愛してくれている(らしい)、心から。


レイに対するこの狂おしい思い、、、

この我侭で身勝手な心情は今夜ここで封印すべきなのだ。


しかし、、、

しかし、これでオレはもう確定、、、か、


これで、、、

これでオレはいいのだろうか、、、?



沈黙を破り、運転手さんが聞いてきました。

「お客さん、どの辺ですか?」

レイが答えました。

「その先の角を左に曲がって、、、そう、そこで結構です。」


タクシーは左に曲がって、すぐに止まりました。

レイが言いました。
「工藤さん、今夜は有難うございました。
 とっても楽しかったです。ここで私降ります。」

私は、レイには「ああ、」とだけ言い、
そのまま言葉をつなぎ運転手さんに向かって、
「ここで一人降りるから、」とドアを開けてもらいました。


私が後から乗っていたので、
私はレイを降ろすために一旦車を降りました。

レイも続いて降りました。



私の目の前をレイが通り過ぎていく、、、


その瞬間、

私は、、、私自身をどうにもできなくなりました。



次の瞬間、

私は、、、通り過ぎようとするレイを後ろから抱き締めていました。



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この物語はフィクションです。

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