J (1.新入社員)
6. 初めてふたりで飲んだ夜 (12)
私とレイ、
この時はまだ恋愛の関係ではありません、
ただの上司と部下の関係でした。
如何に私がレイに対して恋愛の情を持ったとしても、 結婚をひかえた私がレイに対して何をできるわけでもありません。
ただその時、私は初めてレイを恋愛の対象として意識し、 そして、私は初めて婚約者の友美さんとレイを比較したのでした。
私はもとより友美さんに対して、 愛しいと思う心はありましたが、恋愛の情はなかったのです。
ただ愛しいトモミさん、、、
私のその思いは確実で、私はここまで来たのです。
誰からもオープンに認められ、 誰もが祝福してくれる、私と友美さんの結婚。
私はそれを恋愛であると信じていました。
しかし、レイに対するこの狂おしい感情は何だろう?
私の一生が確定的になったこの今になって、 私は失いかけている何かを見出した、そんな思いに駈られている。
いったい私はどうしよう、、、
私は心の中でそんなことを考えていたのですが、 実際にレイと話していることは当り障りのない会話をしていました。
「うまいだろ、この爆弾巻、」とか、 「遅くなっちゃったから、明日大変だね、」とか、
レイもまた私の心のうちを知ってか知らずか、 他愛もない話をしていました。
「おいしいです、これいろんなものが入っているんですね、」とか、 「大変、もうこんな時間、」とか、、、
私とレイはだいたいを平らげて、一服つけてからすし秀を出ました。
表に出て私はレイに、
「もうこんな時間だから、車(タクシー)で送っていくよ、」
と声をかけました。
レイは一人暮らしをしていました。
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